建物の賃貸借契約を締結する際に、敷金や保証金が必要なケースがあります。しかし最近の建物賃貸借契約においては、敷金と保証金の違いがよく分からないというケースもあるでしょう。
その理由として、敷金の償却は「敷引き」と考えれば分かりやすいですが、保証金を償却するということは業務用建物だけなのかと感じるなど、保証金の法的性質がよくわからないという問題があるからです。
賃貸借物件が売買された時の保証金の返還義務は承継される?
敷金と保証金は異なるものなのか、それとも同じものなのかが不明ですし、同じものだとしたら賃貸借物件が売買された時には敷金と同じく保証金も買主に返還債務が承継されるのかを理解しておきましょう。
敷金は賃貸借契約を結ぶ際に、借主から賃料やその他の債務を担保する目的で設定されます。契約が終了した時に、借主に債務不履行があればその分減額されて返還されますが、債務不履行など問題がない場合は全額が返還されることになります。
保証金も同様の目的で設定されることが多いので、債務の担保として差し入れられた保証金は賃貸借物件が売買されると、返還債務は買主に承継されると考えられます。
保証金の一部を償却する特約がある場合は?
建物の賃貸借契約を結ぶ際に、建物を明渡す時には保証金の一部を償却する特約を付帯していた場合、償却される保証金はどのような性質のものになるのでしょう。
例えば権利金は土地の賃貸借の場合と同じく、権利設定の対価や借家権設定の対価として借主から貸主に支払われることが一般的です。そのため返還されないものだと考えられますが、建物の賃貸借契約においては賃借権譲渡の目的で設定されることもあります。
礼金も返還されないものであることが一般的ですが、権利金と礼金、いずれにしても保証金の一部を建物の明渡しの際に償却し、返還しないことは特約で事前に確定させるので権利金や礼金と同じ法的性質のものと考えられます。
結論としては、この償却される保証金が敷引きとしての性質のものではない限り、権利金や礼金としての性質であると考えられるでしょう。
更新する際に保証金を償却する場合は?
では契約を更新するごとに保証金の一部を償却して、償却額は借主が補充する特約を付帯していた場合、償却される保証金の性質はどの様なものなのでしょう。
例えば更新の際に支払う更新料は、一般的には更新の対価として受取る費用で、借主が契約を更新するごとに償却額を補充するものと言えるでしょう。そのため期間を定めた賃貸借であれば、償却される保証金は更新料としての性質があると考えられます。
保証金の性質を理解しておくこと
敷金や保証金は、建物が居住用のものでも業務用のものでも設定されていますが、居住用の場合は敷金、業務用は敷金と保証金の名目で設定されていることが多いようです。名称が違うと混乱する場合もありますが、どのような性質のものかを理解しておきましょう。