相続が発生したとき、相続人は亡くなった被相続人が遺した財産を相続することになります。もし生命保険に加入していれば、保険金は受取人に支払われることになり、必ずしも法律上の法定相続人に支払われるとは限りません。
また、法定相続人が受取人の場合でも、その額によってトラブルが生じる可能性がありますので、現預金、不動産などいくつか財産がある場合には誰に何を相続させるかなど注意しておく必要があります。
生命保険の受取人とは?
生命保険を契約してから、保険金を受取る権利を持つ人が生命保険の受取人です。
ただし、誰でも受取人になれるわけではなく、基本的には配偶者、もしくは親や子、祖父母、兄弟姉妹、孫など二親等以内の血族で、複数名指定することもできます。
生命保険会社から承認を得ることで、叔父や叔母、甥や姪など三親等内の血族を受取人に指定できることもあります。
法定相続人とは?
法定相続人は被相続人が亡くなったとき、法律上、被相続人の遺した財産を取得する権利を持つ人です。
法定相続人は、配偶者、直系卑属、直系尊属、兄弟姉妹など、家族構成や被相続人が亡くなったときに生存している人によって異なります。
配偶者には常に相続権がありますが、あとは定められた順位に従い相続人が決定します。優先された順位に該当者がいない場合には、次の順位に該当する人が相続人となります。
□第一順位:直系卑属
被相続人の実子、養子、子が先に亡くなっているときには代襲相続により、孫、ひ孫と続きます。
□第二順位:直系尊属
直系卑属がいない場合は、被相続人の父母が相続人となりますが、父母が先に亡くなっていれば代襲相続により祖父母と続きます。
□第三順位:兄弟姉妹
直系卑属も直系尊属もいなければ、被相続人の兄弟姉妹が相続人となります。兄弟姉妹が先に亡くなっていれば甥姪までが相続人です。
注意したいのは、兄弟姉妹が先に亡くなっている場合、甥姪が相続人となりますが甥姪が先に亡くなっていても再代襲相続はされないという点です。
かつては民法に兄弟姉妹が相続人である場合、再代襲相続される規定がありましたが昭和55年に民法が改正されて規定は削除されました。そのため、現在は兄弟姉妹が相続人の場合、再代襲相続は認められません。
生命保険の保険金は受取人の固有の権利
注意したいのは生命保険の受取人が受取る保険金は、受取人の固有の権利であるという点です。当然、法定相続人の権利だと思うかもしれませんが、相続財産として受取人に支払われるというものではありません。
仮に被保険者に多額の借金があって、すべての法定相続人が相続放棄した場合でも、受取人は保険金を問題なく受けることが可能です。
保険金が多額の場合に起きるトラブルとは?
生命保険の保険金の額が多額で、受取人が法定相続人であるケースなどの場合、この保険金の受取りを巡って複数の法定相続人同士でトラブルになることがあります。
その理由として、他の法定相続人との間で不公平が生じた場合、不公平を是正するため特別受益として認められる場合があるからです。
法定相続人同士での話し合いや、家庭裁判所などで特別受益だと認められた場合、被相続人から受取った財産も相続財産の総額に含まれる事になり、特別受益を受けた法定相続人の法定相続分や遺言で指定のあった相続分から受取った価額分を差し引くことになります。
□保険金は原則として特別受益には該当しない
なお、生命保険の保険金は原則として特別受益に該当しないことになっています。
ただし、支払われた保険金額がどのくらい相続財産総額を占めているかの比率や、被相続人に対する介護など貢献度、生活実態の事情などを総合的に考慮した上で、不公平が著しいかどうか判断される事になりますので、絶対的に該当しないとはいいきれません。
このようなケースも踏まえた上で、生命保険の加入、さらに相続人にどのように財産を分配するのかなど決めておく必要があるでしょう。