住宅ローンなど、一定の債権を担保する目的で不動産に担保権を設定することを「抵当権」といいますが、抵当権以外にも「根抵当権」という権利もあります。
抵当権はローンの返済が終わった場合、債権がなくなるのと同時に消滅しますが、根抵当権の場合は事業資金など、継続的に不特定多数の債権を一括して担保するというものなので、抵当権とは異なった性質があります。
この根抵当権の債務者が亡くなった場合、何も手続きをしなければ元本が確定されてその後、根抵当権として使うことができなくなるなど不都合が生じる場合があるため注意が必要です。
根抵当権のメリット
仮に債権の範囲を極度額5千万円として、不動産に根抵当権を設定したとします。お金を貸した金融機関は、融資や返済が繰り返し行われる度に抵当権設定登記を行わず、5千万円という範囲の中で不動産を担保に取ってまま取引ができます。
そのため、金融機関とお金を借りる事業者などの手間や費用を軽減できることに繋がると言えるでしょう。
もし何も手続きせず放置したら?
では、根抵当権でお金を借りている人が亡くなって相続が発生した場合、不動産に設定した根抵当権はどうなるのでしょう。
結論から言えば、亡くなって相続が発生した日から、根抵当権について何もアクションを起こさず6か月経った場合、根抵当権としての性質を失うことになります。
つまり元本が確定したものとみなされ、その時点で残っている借金額だけを担保する性質に変化するわけですが、通常の抵当権と同じ性質の権利として扱われる様になってしまいますので、極度額の範囲だからと銀行機関から融資を受けようとする場合でも、根抵当権としての性質を失っているので対象となる根抵当権では融資は受けられないと考えておきましょう。
6か月以内に何をすれば良い?
6か月何も行われないままだったので、相続人は根抵当権を利用するつもりがないのだろうと判断される事になりますが、では6が月以内にどのような手続きを行えば良いのでしょう。
仮に相続人が亡くなった事業者が営んでいた事業を承継し、その後も根抵当権を利用して事業を続けたいという場合などは、根抵当権の債務者を相続発生から半年以内に相続人に変更することが必要です。
・債務者は相続人全員?
なお、根抵当権が設定されている場合、亡くなった不動産の所有者が根抵当権の債務者であることが多いですが、この場合、根抵当権の債務者を相続人全員に変更する登記を行います。
根抵当権で担保されていた債務は分割が可能な債務に該当しますので、全ての相続人が相続割合に応じて分割された債務を引継ぐ登記を行います。
・債務者を変更するだけではダメ?
ただし、根抵当権の債務者を変更した登記を行っても、設定されている根抵当権で担保されるのは相続開始時に存在していた亡くなった人の債務だけです。亡くなった後で発生した債務は担保されませんので、金融機関と不動産所有者との間で、特定の相続人との間で発生した債務も担保させるように合意を成立させて登記を行う必要があります。
この登記を行う期間が6か月以内と決まっているため、忘れない様にしておいてください。