代位による登記をご存知でしょうか。
これは債権者代位権に基づいて登記申請を行うことで、債権者が自身の債権を保全するため、債権者が債務者に代わって行う登記申請のことです。
例えば債務者が亡くなったことで相続が発生し、相続人にお金を貸している債権者が自分の債権を保全するため、抵当権設定や差押えを前提に相続人に代わって相続登記を申請するなどが代位登記です。
なお、このような場合には相続人の法定相続分で相続登記を申請することになります。
債権者の代位登記では登記識別情報は発行されない
相続登記を行った場合、完了後には登記名義人に権利証(登記識別情報)を発行することが通常です。
不動産登記法にも登記識別情報の通知について、登記名義人である申請人に登記完了後に識別情報を通知する旨が記載されています。
ただし債権者の代位登記の場合には権利証(登記識別情報)は発行されません。
・なぜ発行されないのか
例えば被相続人Aに相続人BとCがいたとします。
相続人Bの債権者Dが権利を行使するため、A名義の不動産について相続を原因としたB(法定相続割合1/2)、C(法定相続割合1/2)という登記を申請します。
ただしこの場合、債権者Dは登記名義人ではありません。
そのため結果として、登記識別情報は誰にも通知されない状態になります。
・代位登記で相続権を差押え
このケースは相続人Bが債権者Dからお金を借りていて、返済期日を過ぎても返済される見込みがない場合、被相続人A名義の不動産に対する持分の相続権を差押えることを前提に相続登記を代位して行うという場合です。
・公的機関が債権者の場合も同様
国や自治体など公的機関が債権者の場合は、税金滞納に対して行うケースが一般的です。
債務者である相続人の税金滞納分を差押える、または抵当権設定登記を行うための相続登記を役所など公的機関が行います。
このような場合、不動産登記法が改正される前までは債権者代位による登記でも、登記済権利証が発行されていました。
しかし現在、登記識別情報は発行されなくなっています。
登記識別情報がない状態での不動産売買はどうなる?
権利証になるものが手元にない場合で不動産売買や担保設定などを行う時には、権利証に代わる手続が必要です。
この場合、
・登記所からの事前通知
・司法書士による本人確認
・公証人役場での本人証明
という方法を利用することになります。
本来であれば登記所から事前通知という方法がありますが、登記所からの事前通知は、登記所が登記申請に間違いないことを確認し、通知を発送して2週間以内に回答が登記所に到着して登記が完了するという流れになっています。
2週間以内に回答が到着しなければ登記申請は却下されるので、金銭のやり取りを伴った不動産売買などでは利用できないので注意しましょう。
代位登記が行われないように
いずれにしても、代位登記が間に入るとややこしく手間が掛かりますし、何よりも手元に権利証がない状態になってしまいます。
不動産など相続する予定があるのなら、相続権を代位登記されないためにしておくことが大切だと言えるでしょう。