企業の保有する不動産は、会計上、土地はその土地を購入した時に価格である取得原価が簿価(貸借対照表価額)になり、建物は取得原価から減価償却累計額を差し引いた額が簿価です。
販売目的の不動産を保有する不動産会社などは、不動産は商品なので棚卸資産であり、土地代金と建物工事費などが加わった額が帳簿価格になっています。
簿価が時価より安いと含み益が生じている
長く不動産を保有して賃貸業を行っていれば、既に建物の償却が終了して建物簿価はなくなって、土地の簿価も過去の安い価格のままというケースもあります。
しかし建物は人に貸しているので建物の価値は実質ゼロではなく、土地の価格も昔のまま変わらないというわけはありません。
会計上の帳簿価格が実際の適正価格を示さず安すぎる状態で、不動産に含み益が生じていることが多いようです。
時価が簿価より安い場合は?
時価が簿価よりも低く減損が生じているケースでは、例えばバブル時代に過大投資を行ったというケースなどが挙げられます。当時購入した不動産価値は大きく下落し、時価は簿価より低い状態を示します。
不動産会社に取っては不良在庫となるため、売ることができなくなった商品と同様、棚卸資産の減損処理を行います。売る目的でない固定資産でも、購入価格より地価が下落している場合は減損しなければならない事もあります。
決算が正しく行われていないということに?
会社の資産に減損が生じているという事は、決算が正しい資産価値で行われていない可能性を示します。
仮に清算や民事再生、会社更生などの際には保有する不動産を時価評価する事が必要です。
含み益が多いと買収の標的になる可能性がある
不動産の時価が簿価を上回っていれば、会社に多額の含み益が生じていることを示します。
上場企業等の場合、含み益が多い会社は買収のターゲットにされやすくなります。そのため積極的に不動産価値を外部に公表して株価を上げ、買収から守るといった策が必要になるでしょう。
上場していない会社であれば、含み益が生じていたとしても簡単に買収されることはないでしょうが、経営管理上把握しておくことは重要だと言えます。
不動産の適正価格の判定を
いずれにしても不動産の評価は、企業経営を行う上で重要な財務情報を取得する手続きだと言えるため、不動産鑑定などで実際の適正価格を判定してもらうことも必要かもしれません。