家など不動産の所有者が亡くなれば相続開始により相続手続きが必要です。しかし相続登記は義務付けられている訳ではありませんので、亡くなった所有者名義のままである不動産も多く存在しています。
不動産を売却したい場合や、不動産を担保に融資を受けたい場合、相続登記で所有者を変更する必要が出てきます。いざ相続登記が必要になった時、遺産相続手続きを開始しても複数の相続が関係する事でスムーズに相続手続きが進まなくなる事もあるので注意しましょう。
数次相続とは
複数の相続が関係することを「数次相続」といいます。
死亡により相続が開始されたけれど、相続手続きを行わないでいたら相続人の1人が亡くなってしまい、新たな相続が開始している状態です。最初の相続が第1次相続、2つ目の相続が第2次相続と続きます。
数次相続の具体例
例えば法定相続人に配偶者と子2人がいるAさんが平成20年に亡くなり、遺産分割協議や相続登記などを行わないまま平成25年に子の1人であるBさんが亡くなったとします。
Bさんにも配偶者と子2人がいた場合、亡くなった子が属していた親に対する相続権は、子の配偶者と子2人(Aさんの孫)が相続します。
Aさんの不動産に対する遺産分割協議に参加するべきなのは、Aさんの配偶者と子、Bさんの配偶者とその子2人です。相続分はAさんの配偶者が2分の1、子が4分の1、Bさんの配偶者8分の1、Bさんの子2人が16分の1ずつとなります。
数次相続と代襲相続の違い
例えば相続開始より前に相続人が亡くなっていると、その相続人の子供や孫が代わって相続人になることを「代襲相続」といいます。
数次相続と代襲相続の区別が分かりにくいと思うかもしれませんが、代襲相続と違って数次相続は本来の相続人が一度法定相続人になっています。さらに数次相続は本来の相続人だった亡くなった子の配偶者にも相続権が生じる事です。
数次相続が生じている場合の相続登記の進め方
先の例でAさんの配偶者が不動産を引継ぐ場合には、Aさんの配偶者、Aさんの子、Bさんの配偶者、Bさんの子2人という相続人全員が遺産分割協議を行い、遺産分割協議書を作成した上で相続登記を行うことが必要です。
ただしBさんの子のどちらかが未成年の場合、Bさんの配偶者と利益相反関係にあるので裁判所に特別代理人選任の申し立てが必要となり、子2人とも未成年であればそれぞれに別々の特別代理人が必要です。
相続が開始されたら相続登記も忘れずに行うこと
このように不動産の所有権を亡くなった人のままで放置していると、いずれ相続登記が必要になった時に数次相続が生じてスムーズに手続きできない可能性があります。もし相続が発生した時には、不動産の相続登記も早めに行っておくことが望ましいと言えるでしょう。