生涯独身で配偶者や子がいないだけでなく、両親や兄弟もいない「おひとりさま」と言われる人も老後はいずれ訪れてきます。
そしてその人が亡くなった時は相続も発生し、万一の時のために早めに備えておくことが必要です。
第三者に財産管理を依頼できる「財産管理契約」
自分の財産管理を第三者に対して任せる準委任契約を「財産管理契約」といいます。
おひとりさまの場合、万一の際に家族に財産を誰かに管理することを頼むことができませんので、自分が入院することになったという条件などを設けた上でこの契約を準備しておきましょう。
管理の内容として、銀行の預貯金の通帳や印鑑、有価証券、権利証などの保管、地代や賃料、年金など収入の管理、医療費や介護費、公共料金、家賃の支払い、介護福祉施設、入通院やヘルパーの手配、医療や介護保険申請手続きなどについて決めておくことできます。
万一判断能力が低下した時のための「任意後見制度」
判断能力が低下した時などを見据えて、財産管理や身上監護関連事務について第三者に任せる旨を公的な書面で契約しておく制度が「任意後見制度」です。
この任意後見制度の効力は、家庭裁判所が任意後見監督人を選定してからになります。監督人が任意後見人を監督しますが、実際に判断能力が衰えてからでないと効力は持たないという点には注意しましょう。
成年後見制度
家庭裁判所が判断力の衰えた人のために、状況に合わせて成年後見人、補佐人、補助人を選任し、財産管理や身上監護を行うという制度が「成年後見制度」です。
本人、配偶者、4親等以内の親戚、市町村長などで家庭裁判所に申し立てを行うことになりますが、おひとりさまの場合には地域包括支援センターなどに相談を行った上で、市町村長に申し立てをしてもらうことになると考えられます。
相続人がいない場合の財産管理
任意後見契約と財産管理契約を同時に行って、判断能力の持っているうちに身上監護や財産管理を任せておくと良いでしょう。
さらに亡くなった後は法定相続人が存在しないことで、相続財産の処理上のトラブルが発生する可能性があります。
最終的には亡くなったおひとりさまの財産に関して利害関係のある人が、家庭裁判所に相続財産管理人選任を申し立てることになるでしょう。しかし未然にトラブルを防ぐためにも、できる限り遺言書などを活用したほうが良いと考えられます。
自分が死んだ後に後悔しないために
財産を所有していても、相続人がいないのであればその後どのように自分の財産を使ってほしいか遺言書を活用するなど検討しましょう。他にも葬式の方法や埋葬形式、散骨などについて希望を記すこともできます。
生涯独身を貫く人は近年増えているようですが、老後の過ごし方や財産の管理だけでなく、自分が死んだ後の財産の行方などについても考えておく必要があるでしょう。