コンサルティング
営業中の店舗の分譲マンションへの権利変換、ディベロッパーとの交渉
1.依頼の趣旨・動機
- 依頼者は、大都市の商業地域で建物を賃借して、20年以上店舗経営を続けている甲氏で、私の知人の紹介によるもの。
- ディベロッパーが甲氏の店舗を含めた周辺一帯を取りまとめ、分譲マンションを計画中であり、甲氏に対し、マンションの1階部分を分譲予定価格の60%で買い取るか、駄目なら立ち退いてもらいたいと申し入れてきている。
- 甲氏はこのままの状態で商売を続けたいが、甲氏の店舗周辺ではすでに建物がとり壊されて、残るのは隣の建物と甲氏の店舗だけであり、甲氏としては、心理的にかなりの圧迫を受け、どうしたものか悩んでいる。
2.依頼内容
- 分譲予定価格の60%相当額は妥当な水準かどうか。
- 借家の立ち退き料はどのくらい妥当な水準か。
- このままの状態で商売を続けるべきかどうか。総合的に判断して、どう対処すべきか。基本的には、ディべロッパーとの交渉を一任したい
3.不動産の概要
- 甲氏が借りている自宅兼店舗
敷地146㎡(底地地主、借地権者あり)
建物70㎡(借地権者の所有、承諾を得た上で甲氏が増改築)
賃料月額17万円 - 分譲マンション計画概要
土地1590㎡
建築延面積4920㎡
専有面積4560㎡
戸数70戸
4.問題点、課題
- 底地地主および借地権者の承諾を得る必要がある。
- 借家権、営業権の評価については、同様の物件の事例はほとんどない。
- 周辺の状況を考慮すると、現状のまま営業を続けるよりも、店舗、住宅ともに、マンションの1階部分に入居するのが得策と考えられるが、ディベロッパーとの折り合いをうまく進める必要がある。
- 建物取り壊し費用、休業補償、税など細かい諸経費の負担調整。
- 居住用のマンションの中に店舗を構えるため、管理上の問題を管理組合と調整することも必要である。
5.コンサル内容
- 法令上の制限、権利関係、近隣取引事例、路線価、借地権、借地権割合・営業権(暖簾)のほか、造作権取引事例等々を調査、検証した結果
※店舗価格は、マンション分譲価格の30%相当額
※営業権(暖簾)は、マンション分譲価格の20%相当額
※立退き料は、マンション分譲価格の70%相当額
と算定される。 - ディベロッパーは、甲氏の店舗の敷地を取り込む前提でマンション計画を進めているはずであり、計画の実現が重視されると考えられるためディベロッパーには、根拠も含めて、この金額をありのまま伝える。
- 立退き料の折り合いがついても、立ち退きは拒否する。
- 交渉状は、現状のまま営業を受けたいという意向を伝えるものの、最終的には店舗の取得、住宅の賃借をおとしどころにする。
- 休業補償や諸費用負担については、譲歩を含めた弾力的な対応が必要と考えられる。
6.成果
- 底地地主、借地権者からは承諾を得ることができた。
- ディベロッパーとの交渉は、いろいろと紆余曲折があったものの、基本的に当方の 主張を受け入れてもらうことができ、甲氏・ディべロッパー間で、概要次の内容の基本合意契約を締結した。
- 甲は分譲価格の30%で店舗を取得する
- 購入にかかる諸費用、税は甲が負担する
- 営業補償は発生しない。
- 仮住居、引越しは甲の責任と負担で行う
- 現建物の取り壊し(甲の増築分)はディベロッパーの費用負担で行う。
- マンションの近隣に住居を確保し、甲が賃借する。
- 店舗としての営業と管理上の規定について管理規約、重要事項説明書によりマンション購入者への説明を徹底する。
- 店舗部分の持分を仮登記し、契約内容は公正証書とする。
7.コメント
- 1年後マンションが完成し、甲氏は無事開店、丁寧な礼状をいただいた。
- 心配した管理上の問題もとくに起きていない。