油圧機器メーカーである「KYB」が、2018年10月16日に建物の免震・制振装置の検査データを改ざんしていたことが発表されたニュースは、まだ記憶に新しいところかもしれません。

問題となったのは、地震が発生した時に建物の振動や衝撃を吸収させる免震・制振装置である「オイルダンパー」の性能検査結果です。

もし、検査結果で揺れを抑える能力が、国土交通省が設定している基準に達していなければ、分解して再調整を行う必要があります。しかし、KYBでは、その調整の手間を省くために数値を改ざんし、納期に遅れが生じないような対応がなされていました。

問題のある免震・制振装置が使われていると地震で建物は倒壊する?

このデータが改ざんされた状態で建物に設置された免震・制振装置は、全国の観光施設やマンションなど987件に存在しています。

仮にデータが改ざんされた免震・制振装置が使われていたとしても、震度7の地震にも耐えることができ倒壊することはないと国土交通省は発表しています。しかし、起きてもいない地震に対する保証はどこにもなく、実際にどのような影響が建物に及ぶのか不安視されている状況です。

免震や制振の仕組みとは?

そもそも建物の耐震対策として用いられる「免震」や「制振」という仕組みはどのような内容を指す言葉なのか理解しておきましょう。

耐震とは、建物そのものの強度を高め、揺れに耐えることができる状態をつくります。

免震は、建物と地面との間に発生した揺れを吸収する装置を設けて、揺れが建物に伝わらないようにする仕組みです。

制振は、壁や骨組みなどに揺れを吸収する装置を設けて、建物に起きる揺れを低減させます。

データが改ざんされていることで及ぶ建物への影響

これらの仕組みの中で、KYBがデータを改ざんしたのは免震と制振の2つです。本来であれば20~30%くらいまで揺れを軽減させることができたはずのものが、数値が改ざんされたことでどのような状況に陥るのでしょう。

仮に基準許容値より数値が下回っていれば、ダンパーの動きは通常より柔らかさを増すことになり、揺れは軽減されなくなり家具などの転倒や窓ガラスの破損などが起きる可能性があります。

反対に基準許容値より数値が上回っていると、ダンパーは通常より動きが固くなるため、地面の揺れが建物に伝わりやすくなってしまい、壁に亀裂が生じたりドアや窓が閉まらなくなるなど建物構造自体に損害が及ぶ可能性が高まるでしょう。

国土交通省が発表しているとおり、確かに建物が倒壊する恐れはないのかもしれませんが、本来の機能が失われた状態では意味がないと考えられます。

どのような修復工事が必要となるのか

問題のあった装置を修復する場合には、免震なら地下空間で工事を行う事となり、製品の交換はある程度容易にできるでしょう。

しかし制振は壁の中などに設置されることが多いため、交換作業を行うには一旦壁を取り壊す大掛かりな工事が必要です。そうなると、工事が実施されている期間中は、対象となる施設や住宅の使用や居住は難しくなります。

問題のある免震・制振装置が設置された987件のうち、70件については建物名も公表されていますが、今後、KYBがどのように対応していくのか注目されるところと言えます。

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