遺産相続などについて、2018年3月に民法改正案が閣議決定され、7月には国会で成立しました。

それにより、相続法が改正されることとなりますが、社会の高齢化が進む中、相続開始時において配偶者の年齢も高くなることを見込み、その保護の観点から改正される運びとなったわけです。

残された配偶者の生活に配慮するため、居住の権利を保護する方策が盛り込まれることになり、さらに遺言の利用を促進し自筆証書遺言の方式を緩和するなど、相続による紛争を防ぐことも目的とされています。

そこで、どのような見直しが実施されるのか確認しておきましょう。

配偶者居住権の新設

現行制度でも配偶者が自宅の所有権を相続した場合、そのまま継続して住むことはできます。しかし、遺産分割で得ることができる他の財産は少なくなるという問題が起きます。そこで新設されるのが「配偶者居住権」で、そのまま自宅に住みながら生活資金も確保することが可能となります。

例えば亡くなった夫の遺産が2,000万円の自宅、それと預貯金3,000万円だったとします。相続人は妻と子の2人で、妻が自宅に住み続けたい場合はどうなるでしょう。

現行制度では相続分は2分の1ずつなので、妻は自宅2,000万円と預貯金の500万円を相続することになり、残りの2,500万円の預貯金は子が相続します。

しかし、新たに制度が導入されることにより、妻は配偶者居住権を使うと、実際の所有権より低い割合で自宅に住み続けることができます。

遺産分割に関しての見直し

また、配偶者保護のため、婚姻期間が20年以上の夫婦は、住居の贈与が特別受益の対象外となります。

配偶者間で住居を生前贈与する場合など、特別受益と評価されないので遺産分割の計算対象から外して考えることが可能です。自宅を特別受益と評価されなくなれば、配偶者はその他の財産を受け取れなくなるといった事もなくなります。

相続人以外の人の貢献を考慮する方策

被相続人の生前に介護や看病で貢献した親族に考慮した制度が創設されます。法定相続人ではない親族が、被相続人に対して介護や看病など貢献したことを考慮するため、新たに相続人でない親族でも一定要件の下、金銭の請求が可能となります。

遺留分制度に関する見直し

例えば経営者だった被相続人が、事業を手伝ってくれていた長男に土地建物を相続させ、長女には預貯金を相続させたいと遺言を残したことで、不満を持った長女が長男に対して遺留分減殺請求権を行使したとします。

このような場合、現行法では持分割合により複雑な共有状態になる可能性がありますが、制度が導入されることで共有関係が当然に生じることを回避することができ、遺言者の意思を尊重することが可能です。

相続の効力等に関する見直し

相続させる旨の遺言などで承継された財産は、現行法では登記しなくても第三者に対抗する事ができるとされていましたが、法定相続分を超える部分の承継については登記などの対抗要件を備えなければ対抗できない事となります。

自筆証書遺言の方式緩和

自筆証書に対し、パソコンなどで作成した目録を添付すること、銀行通帳の写しや不動産の登記事項証明書等を目録として添付することなどが可能となります。

法律の施行期日は?

これらの改正は原則、公布日から1年以内に施行される事とされています。

遺言書の方式緩和は平成31年1月13日から、配偶者の居住の権利は公布日から2年以内に施行されるようです。

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